10年会社をやって思うこと

こんにちは、加藤です。

2023年11月22日で弊社は創立10周年を迎えることが出来ました。今までブリッヂに関わってくださった全ての方に御礼申し上げます。

30代の全ての時間を会社とともに歩んできて、このタイミングで一度今までの歩みや反省を自分の中で整理しておきたいと思い、このブログを書いています。

弊社はEXITを目指すようなスタートアップではなく、僕の「好きな人たちとずっと一緒に笑いあいたい」という理想を叶える為の場所として作られました。

このような想いだけで始めた会社なので参考になる結論等があるわけではないのですが、生き方の選択肢として起業を選んだ人間の一感想として読んで貰えたら嬉しいです。

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弊社のメイン業務は360度映像制作(ストリートビュー撮影、360度動画撮影)で、もともと僕がGoogleに派遣社員として勤めていた時に、店舗などの室内を360度撮影し、ストリートビューとしてGoogleマップに掲載する仕事をしており、その業務をメインに独立した事が背景となります。

※室内版ストリートビューの詳細についてはこちらをご覧下さい。

Googleで室内版ストリートビューの撮影が始まった当初(2010年頃)は僕のようなGoogleのスタッフが直接撮影に行っていたのですが、1年半程経ったタイミングで、外部の会社に撮影、販売の認定を与えるパートナー制度が始まりました。

僕はパートナー企業に撮影研修をさせて貰う担当になり、それを機に知り合った会社の一社に誘われる形で転職し、カメラマンとして事業に参加しました。

僕は昔から起業することを目標にしていたので、そこで1年活動した後、2013年に会社を登記し、合わせてGoogle認定パートナーの資格も取得しました。

室内版ストリートビューに可能性を感じていた部分もありましたが、ルーツとしては自分が中学生の頃に「大人になっても自分で会社をやって友達を雇えば好きな仲間達と一緒に居られる」と思った事が大きなきっかけでした。

独立後、ありがたいことにGoogleの時から付き合いのある広告代理店から沢山の撮影委託を頂きました。一人では業務を回し切れなかったのと、自分の理想を叶えたい思いもあり、僕の奥さんや仲の良い友達に社員として加わってもらいました。

しかし、この「委託業務を回す為に人員を増やす」という判断は良くありませんでした。従業員を雇うという事は毎年少しづつでも給料を上げ続けるという事が前提で、その為には毎年売り上げを伸長させる必要がありますが、単価の低い委託業務に時間を掛けてしまった事で、直接の取引先を増やしたり、新商品を開発したりするといった本来取り組むべき業務に手が回らず、現状を維持するだけで精一杯のまま時間が過ぎていきました。

ストリートビュー撮影は技術的な敷居が低かった事もあり、多くの企業が参入してきたのですぐに価格競争が起き、生き残るためには直営業やブランディングに力を入れなければならない事は明らかでした。

しかし、現状の収支がギリギリの中でさらに営業人員を増やす事もできず、その結果単純に好きだから一緒にいたいと思って会社に参加してもらった妻や友人達に対し、入社時とはまったく別のスキルを要求し、成長を促さなければならなくなりました。

僕は基本的に全ての人と対等な関係で居たいと思っているので、上から指示を出したり、マネジメントしたりする事が苦手でした。仲間の適性に合わない事をお願いし、結果うまくいかないという事が続き、僕自身が仲間との関係性を少しづつ悪くしてしまいました。

今となって思えば、「好きな人と一緒に笑い合う」ことを会社という枠組みでやる必要はなかったのですが、当時の僕はこの難題に何らかの答えを出そうと四苦八苦していました。

この頃はビジネスコンテストやピッチイベントにも色々と参加しました。弊社は自社開発のサービスを持っていないので、出資ではなく営業先のマッチングが目的でした。360度撮影というサービスの目新しさから何件か打ち合わせをさせてもらいましたが、「何か新規事業のネタが見つかれば良い」という大企業の担当者と、「毎月売り上げを立てないと3ヶ月後には給料が払えなくなる」という僕とでは明らかに目的と温度感が異なっていました。

とにかく全員が稼働できる量の仕事を確保する事が最優先なので、未来に繋がるサービスの開発をやりたくても出来ないもどかしさがありました。

そのような中で委託業務も減少していき、給料が払えなくなるのも時間の問題というタイミングで覚悟を決め、友人達に辞めて貰う事を相談しました。

一緒にいたいと思う友達を雇ったのに、最後まで支える事が出来ず、会社を存続させるため、引いては自分の身を守るために辞めて貰ったのです。本当に申し訳ない事をしてしまいました。

友人関係は、自由意思でただ好きだから一緒にいるという関係なので、大事にすれば一生続ける事ができます。

一方で雇用関係は、双方の利益の為に時間とお金を交換する関係なので、利害が一致しなくなれば破綻してしまいます。

僕はこの当たり前の事がわかっていなかった為に友人を巻き込み、自分の能力不足で解雇し、迷惑をかけてしまいました。6人居た会社は、僕一人だけになりました。

ここまでがむしゃらに、自分の望みである「みんなで一緒に笑いあう」を叶える為にやってきたので、一人になった時点で会社を続ける意味があるのかが解らなくなりました。しかし仮に会社を畳んだとしても、何をすれば自分の望みが叶うのか解らず、苦しんでいました。

新しいサービスを開発し、スケールさせてお金を稼ぎ、それを元手に利益に囚われない自由な経営をする、というような事も考えました。しかし突き詰めて考えていくと、資本主義で最も効率良くお金を稼ぐには人(顧客や従業員)をいかに上手くコントロールするかが重要であり、そこに至るまでの過程が既に、対等な立場で一緒に笑いあいたいと思っている僕の理想と相反していました。

どこまでいっても僕がやりたい事は「みんなで一緒に笑いあう」ことしかなかったのです。会社経営は偶然選んでしまった手段なので、あっても良いしなくても良いが、求めてくれる人がいる限りは続けたい。雇用せずとも、お金を媒介とせずとも、関わってくれる全ての人達を笑顔にするという原点に戻り、日々行動すればいいのではないか。観念的ですが、今はそんな風に思っています。

お金を稼ぐために経済合理性を追及していると、周りにも経済合理性を追及している人が集まってくるので自然と心が荒んでいき、人間関係が乏しくなる気がします。10年間走ってきたことに後悔はありませんが、10年という時間の重さも感じています。

これからはより自分らしく、美しいと思う事、本当に価値があると思うことに取り組み、それに共感してくれる仲間を増やしたいと思っています。

自分の理想は変えられないので、それを大事にしながらどうやって社会的価値を生み出し、生きていくかを考え、また一から努力していきます。

会社を始めた時は30才だった僕ももう40才になり、みんなで一緒に笑いあえる時間も有限だなあとしみじみ感じています。僕は僕の変わらない理念を大切にこれからも進んでいくので、引き続きお付き合い頂けたら嬉しいです。

この記事を書いた人

株式会社ブリッヂ 代表取締役

2010年からGoogleのベンダー社員として3,000件以上の室内版ストリートビューを撮影してきました。
VRや360度コンテンツの作り方、Googleビジネスプロフィールの使い方が学べるブログを書いています。

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